資産管理会社は信用保証協会の保証対象や日本政策金融公庫の融資対象になり得るのか、経営者保証に関するガイドラインの位置づけとあわせて、公表資料の記載内容をもとに対象要件を制度ごとに整理し、一律の可否断定は避けて解説します。

資産管理会社が融資を受けられるかどうかは、業種名だけで一律に決まるものではありません。

信用保証協会・日本政策金融公庫という2つの公的な融資・保証制度と、経営者保証に関する自主的なガイドラインは、それぞれ別の基準で対象を判定しています。

本記事では、これらの制度が実際に何を根拠に判断しているかを、公表資料に基づいて整理します。

本記事では、不動産賃貸業を行う資産管理会社を想定して解説します。信用保証協会・日本政策金融公庫の基準を見る限り、「資産管理会社だから一律にNG」という単純な整理はできません。

この記事では、信用保証協会・日本政策金融公庫・経営者保証ガイドラインという3つの観点から、何が確認されているかを解説します。

資産管理会社の融資可否は何によって判断されますか

公的な融資・保証制度の対象要件を確認すると、業種の切り口は「資産管理」という目的そのものではなく、「不動産賃貸業」といった業種分類と、資本金・従業員数による中小企業者としての規模要件で判定されています。

つまり、資産管理会社が実際に不動産賃貸業を行っているかどうかによって、規模要件上の扱いが変わり得るということです。

ただし、この規模要件を満たすことは制度利用を検討するための要件の一つにすぎず、実際の利用可否には後述する保証事故の有無や税金滞納の有無など別の要件も関わります。

可否を業種名の印象だけで判断せず、制度ごとの対象要件を個別に確認する必要があります。

信用保証協会の保証は資産管理会社でも利用できますか

信用保証協会の信用保証制度は、中小企業信用保険法に定める中小企業者・小規模事業者を対象としています。

対象となるかどうかは業種ごとに資本金または従業員数のいずれか一方の基準を満たすかで判定され、製造業等は資本金3億円以下または従業員300人以下、卸売業は資本金1億円以下または従業員100人以下、小売業は資本金5,000万円以下または従業員50人以下、サービス業は資本金5,000万円以下または従業員100人以下という基準が設けられています。

東京信用保証協会が公表している資料では、不動産業は「製造業その他」区分に含まれ、建売業・不動産賃貸業・貸家業・貸間業・不動産代理業・仲介業・不動産管理業が保証対象業種として明記されています。

一方、信用保証を利用できない対象を挙げた資料にも、「資産管理会社」「持株会社」であることを理由に一律で除外する記載は見当たりません。

とはいえ、これは「資産管理会社なら必ず保証対象になる」ことを意味するものではありません。

保証の可否は、企業規模基準を満たしているか、保証対象業種に該当する実態があるか、既往の保証事故や税金滞納がないかなど、個別の状況によって判断されます。

あくまで制度上、資産管理会社であること自体が一律の除外理由にはなっていない、という整理にとどめておく必要があります。

日本政策金融公庫の融資は資産管理会社でも利用できますか

日本政策金融公庫の融資制度は、事業の区分によって対象業種の扱いが異なります。

中小企業事業の融資対象業種・企業規模要件を示す資料では、製造業・建設業・運輸業等は資本金3億円以下または従業員300人以下、卸売業は資本金1億円以下または従業員100人以下、小売業・飲食店は資本金5,000万円以下または従業員50人以下、サービス業は資本金5,000万円以下または従業員100人以下という基準が設けられている一方、融資対象外業種として「不動産業のうち住宅及び住宅用の土地の賃貸業」が明記されています。

一方、国民生活事業の一般貸付は「事業を営むほとんどの業種の方」を対象としていますが、不動産賃貸業については個別の融資メニューである企業活力強化資金でのみ、かつ「中心市街地の活性化に関する法律第15条第1項各号に定めるまちづくり会社等に該当する方等」という限定的な要件を満たす場合に対象となる旨が示されています。

この要件は特定のメニューに紐づく限定条件であり、不動産賃貸業を営む事業者であれば国民生活事業のどの融資メニューでも利用できる、という一般的な根拠として拡大して読むことはできません。

このように、日本政策金融公庫の中でも「中小企業事業」と「国民生活事業」とで対象業種の扱いが異なり、かつ資産管理会社が行う不動産賃貸業の内容(住宅及び住宅用の土地の賃貸業に該当するかどうかなど)によって該当・非該当が分かれる可能性があります。

詳細な要件は支店窓口での確認が必要とされている点も、公庫側の資料に明記されています。

信用保証協会と日本政策金融公庫では基準が違うのですか

はい、異なります。

東京信用保証協会の資料では不動産賃貸業(貸家業・貸間業を含む)が保証対象業種として明記されている一方、日本政策金融公庫の中小企業事業では「不動産業のうち住宅及び住宅用の土地の賃貸業」が融資対象外と明記されています。

両者は別の主体が運営する別の制度であり、判定基準も別に定められています。

したがって、「信用保証協会で対象になるなら日本政策金融公庫でも対象になるはずだ」あるいはその逆、という前提で話を進めることはできません。

資産管理会社が融資や保証の利用を検討する際は、どの制度・どの融資メニューを対象としているのかを個別に確認し、それぞれの基準に照らして判断する必要があります。

資産管理会社なら経営者保証なしで借りられますか

経営者保証に関するガイドラインは、中小企業団体と金融機関団体が共通して定めた自主的・自律的な準則であり、平成25年12月に策定・公表、平成26年2月から運用が開始されています。

法的拘束力を持つものではなく、当事者による自発的な尊重・遵守が期待される性格の文書である点は押さえておく必要があります。

ガイドラインでは、金融機関(対象債権者)が経営者保証を求めない可能性を検討する際の判断基準として、法人と経営者個人の資産・経理が明確に分離されていること、法人と経営者の間の資金のやりとりが社会通念上適切な範囲を超えないこと、法人のみの資産・収益力で借入返済が可能と判断できることの3点が示されています。

これに対応する形で、主たる債務者側に求められる取り組みとして、法人と経営者の関係の区分・分離、財務基盤の強化、財務状況の正確な把握と適時適切な情報開示という3つの要件が挙げられています。

資産管理会社であるかどうかにかかわらず、法人を設立しただけでこの3要件が満たされるわけではありません。

ガイドラインはあくまで金融機関が保証を求めない可能性を「検討する」際の基準であり、資産管理会社を設立すれば自動的に経営者保証が外れる権利が発生するものではありません。

3要件を継続的に充足する体制を実態として整備した上で、対象債権者が総合的に判断するプロセスであることを理解しておく必要があります。

事業承継のタイミングで経営者保証はどう扱われますか

事業承継の場面に特化した規定として、令和元年12月に「事業承継時に焦点を当てた『経営者保証に関するガイドライン』の特則」が策定・公表されています。

この特則では、経営者保証が事業承継の阻害要因とならないよう、前経営者・後継者の双方から二重に保証を求めないことを原則としています。

ただし、二重徴求が例外的に許容され得る場合として、前経営者の死亡後に相続が確定するまでの一時的な期間や、前経営者が引退した後も法人から前経営者への多額の貸付金等の債権が残存し保証解除が著しく公平性を欠く場合など、複数の類型が本文に明記されています。

原則禁止であっても例外がある、という構造を正しく理解しておく必要があります。

また、令和2年度から取扱いが開始された「事業承継特別保証制度」は、保証申込受付日から3年以内に事業承継を予定する具体的な計画を有し、資産超過である等の財務要件を満たす中小企業に対して、事業承継前の経営者保証付き借入を無保証の借入へ借り換える制度です。

信用保証付き借入だけでなく、プロパー借入(他の金融機関扱い分を含む)も対象になり得ますが、あくまで一定の計画性と財務要件を満たす場合に限定された制度であり、無条件・無審査で保証が外れるものではありません。

資産管理会社が融資を検討する際に確認すべきこと

ここまで見てきたとおり、資産管理会社が融資や信用保証を受けられるかどうかは、「資産管理会社である」という一点だけで機械的に決まるものではありません。

信用保証協会・日本政策金融公庫(中小企業事業・国民生活事業)という2つの公的な融資・保証制度と、経営者保証に関する自主的なガイドラインは、それぞれ別の基準で対象業種や判断基準が定められています。

実務上確認すべき論点は、大きく分けて次の3点に整理できます。

第一に、資産管理会社が実際に行っている事業の内容(不動産賃貸業に該当するかどうかなど)が、検討している制度の対象業種に該当するかどうかです。

第二に、資本金・従業員数といった企業規模基準を満たしているかどうかです。

第三に、経営者保証の扱いについては、法人と経営者個人の資産・経理の分離、財務基盤の強化、適時適切な情報開示という3要件を、どの程度体制として整備できているかです。

融資の可否は、事業実態・保有資産の内容・返済原資・資金使途によって個別に判断されるものであり、本記事で紹介した制度の対象要件は、あくまで検討の出発点となる公的な基準です。

実際に申込みを検討する段階では、対象となる制度の窓口で最新の要件を確認し、自社の事業実態がどの基準に該当するかを個別に照らし合わせることが欠かせません。